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研究活動

仏教の生死:パラダイム論的省察

ユニット4
開催日時 2010年10月26日(火)10:45~12:15
開催場所 龍谷大学 大宮学舎南黌203教室
講師 ロナルド・Y・ナカソネ氏(GTU, Professor, Buddhist Ethics / Stanford Geriatric Education Center,Stanford University Medical School)

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今回の特別講義は『仏教の生死:パラダイム論的省察』をテーマにし、長年アメリカで死生観に関わる問題に取り込んでおられるロナルド・Y.ナカソネ教授によってご発表いただいた。戦争被害者の話を紹介されながら仏教死生観について問題を投げかけられた。仏法の再考と思索のパラダイムについて弁証的に論じられた。

 数多くの原爆被爆者とのインタビューを行った心理学者のロバート・ジェイ・リフトンは、死を超越することを説くさまざまな宗教的思想を含め、いかなる思想も、被害者が自分の被爆体験を理解するための力とはなり得なかったという恐ろしい結果を見出した。ナカソネ先生も元「従軍慰安婦」のセオ-ウーン・ジェオン氏にインタビューし、他の人間たちが彼女に対して行った残酷な行為は、彼女から人間存在の合理性と人間的意味に対する信仰を奪い去ったと指摘した。何世紀もかかって築き上げられた仏教と儒教にもとづく文化や教育が、たった数年間の軍国主義によって、なし崩しにされてしまったという事実に気付いた。そこで、ナカソネ先生は「どのような仏法の教えの中に、被害者は、生きる力と心の癒しを得ることが出来るのでしょうか」と問いかけられた。

 ナカソネ先生は、仏法が今後も引き続いて、現実に関与し続けられるかどうかは、科学や技術の発展と、進化しつつある出来事に対応しながら変化していく人間性のヴィジョンについて、仏教者が再考しつづける力量を有しているかどうかにかかっていると述べた。

また、仏教的思考のパラダイムに関しては、「曖昧性」と「不確実性」が提示された。具体的には、十玄門とそれを支える仮定(継続的流動性と複合的中心)が、決定的な判断と意味のある比較を確立する事ができるための時間的または空間的固定性を回避するのである。

例として、1997年に制定された臓器移植法にある複数の死の概念が挙げられる。例えば、脳死の判定は臓器提供者とその家族の間の合意によるものなど。この法律は、日本人が、脳死と臓器移植という最近現れた概念に対して持つ相矛盾する感情と、それを何とか受け入れようとする気持ちを反映しているのではないかと推測された。さらに、「パイの物語」という例をあげて宗教には絶対性ではなく相対性が求められるのではないかと推論された。

 全く新しい状況に直面した時、また古い思考法や行動の仕方が、もはや満足できる答えを与えてくれない時、私たちは解釈学的想像力を拡大し、古い概念のパラダイムから、さらなる知見を絞り出す努力をする必要があると述べ、“think outside the box”が必要になってくると結論された。(RA胡)

 

日本の終末期医療におけるスピリチュアルケアと宗教的ケア──ビハーラ僧とチャプレンの宗教間対話より

「死生観と超越 ─仏教と諸科学の学際的研究」 公開講座

ユニット4
開催日時 2010年7月22日(木)9:00~10:30
開催場所 龍谷大学 深草学舎 顕真館
講師 浜本京子(日本バプテスト病院チャプレン)
森田敬史(長岡西病院ビハーラ棟 ビハーラ僧)
参加者 コーディネーター: 打本未来(龍谷大学非常勤講師 愛染橋病院チャプレン)

【開催主旨】
 日本バプテスト病院チャプレン浜本京子先生と長岡西病院ビハーラ病棟でビハーラ僧の森田敬史先生をお招きし、終末期の患者様へのスピリチュアルケアと宗教的ケアについて実践を交えてお話いただきます。
 スピリチュアルケアと宗教的ケアはいまだ混同されることが多く、その違いや共通点も
まだ理解されているとは言いがたい現状です。
 キリスト教を基盤とする病院、仏教を基盤とする病院という違いが、それぞれの終末期
医療の現場でどのように活かされているのかについてお話いただきたいと思います。死にゆく人のために今、日本で何ができるのか、仏教とキリスト教が宗教の違いを超えて、ご対談いただきたいと思います。

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 講演会では、日本バプテスト病院チャプレンの浜本京子先生、長岡西病院ビハーラ棟 ビハーラ僧の森田敬史先生によって具体的な活動内容や経験を提示されながら、スピリチュアルケアと宗教的ケアに関する対論が行われた。

 両先生は実際に病院内で活動されていることもあり、医師、看護師、そしてチャプレン、ビハーラ僧が「生」や「死」の場面に直面し、また、身体的にも精神的にも多様な悩み、苦しみと向き合われているのかがよく理解できた。その中で、両先生が共に主張されたことに「関係」の構築というものがあった。これは、患者さんとの「関係」だけでなく、病院内での「関係」の構築といった広い意味を持つが、そうした「関係」の中で、スピリチュアルケアが行われているということは、「縁起」を説く仏教に対してもその活動が重要な提言となりうると思われる。

 そうした中で、「宗教的ケア」では、そのような「関係」の中に神や仏が入ってくるということであったが、病院内では宗派の違いや、特定の宗教をもたれない方とも接していくが、そこに何ら不利益も問題もないと言われた。これは、コーディネーターの打本先生が指摘された、「宗教」と「スピリチュアリティ」の関係や捉え方と関わる事柄であるだろう。

 最後に、3名の先生方はそれぞれに「宗教的ケア」の必要性を述べられていたが、その理由として「死」を直接経験していない人が、「死」に直面する方の話を聞く、という行為を挙げられていたことを新たな知見として提示したい。打本先生は、宗教は「死や死後の世界に対する答え」を持っていると指摘されたが、これまで宗教で問題とされていた事柄が、現代の医療現場において必要性を訴えられていること、現に実践をされている先生方から提示されたことは、今後さらなる研究が進められるべき論点の提示だと受け止められる。(PD岡崎)

臓器移植をめぐる死生観と生命倫理

「死生観と超越 ──仏教と諸科学の学際的研究」UNIT4・特別講演

ユニット4
開催日時 2010年6月29日(火)10:45am~12:15pm
開催場所 龍谷大学大宮学舎 南黌203( 京都市下京区七条通大宮東入大工町125-1)
講師 中西健二(元・社団法人日本臓器移植ネットワーク 臓器移植コーディネーター 人間科学博士)
参加者 レスポンス: 黒川雅代子(龍谷大学短期大学部准教授)
モデレーター: 鍋島直樹(龍谷大学教授)

【開催主旨】
 臓器移植とは一つの医療技術ですが、臓器移植という技術が広く社会に受け入れられるには、医学だけではなく、法律学、哲学、社会学、宗教学、心理学など様々な学際的アプローチが必要不可欠です。当日は日本における臓器移植の現状を報告するとともに、臓器を提供する人、移植を受ける人、そこに関わる医療従事者や移植コーディネーターの声を紹介し、臓器移植が抱える課題について皆さんと一緒に考えたいと思います。

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 本講演では、臓器移植に関する基礎知識や歴史、海外と日本国内の現状比較などについて紹介された。また、日本国内の現状に関しては、臓器移植法の改正法における誤解されやすいところや最近の調査での新たにわかった結果をメインとして紹介された。
 世界初の心臓移植が行われた一年後の1968年に、日本初の心臓移植が行われたが、法律の不整備などによって一時期医療界でタブー視された。1997年に脳死での臓器移植を認める臓器移植法が成立し、去年、改正法が通過した。しかし、法整備がされた現在でも臓器移植のケースが海外と比べてまだまだ低い数字のままである。
  その理由を調査の結果からいくつか説明された。まず普及啓発の問題、及びコーディネーターの不足が指摘された。海外ではコーディネーターの数も多く、役割分担も細かくされているのに対して、日本においてはまだまだ足りないところがたくさん残っている。例えば、日本全国の臓器移植コーディネーターは28人に留まり、2人で9県の仕事を担当する場合も生じている。そのため、人々への臓器移植に関する知識の普及啓発は低い水準に留まり、臓器提供希望率はまだ高くない。次に移植システムの問題が説明された。臓器提供を行うことのできる4類型施設を中心とした1,634施設へのアンケート調査によって、脳死下臓器提供が進まない理由が3つ浮かび上がった。一番目の「家族の申し出がない」は上記に述べた普及啓発につながるが、二番目の「脳死判定をしない」と三番目の「院内体制が整備されていない」ともシステムに関連する問題となっている。
  また、ドナー家族への調査から見ると、「体の一部分をどこかで生きてほしい」と願って提供を決めた家族が日本では最も多かった。それは国民の仏教信仰にも関連するのではないかと推測された。
  最後にドナー家族の死別悲願への対応について紹介された。ドナー家族の精神的健康は臓器提供をしていない突然死遺族とほぼ同じ(黒川,2009)とする調査結果や、臓器提供に対する満足度は精神的健康と有意な相関関係にあるなどの調査結果が出ていることから、ドナー家族へのアフター支援も大事であることが説明された。
  講演会を聞いた方々からもらったアンケートを見ると、「これをきっかけに臓器提供や移植などについて始めて真剣に考えた」といった意見がたくさんあった。(RA胡)

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