成長から持続可能性へ―効率・競争の時代から共生・共感の時代へ

龍谷大学 人間・科学・宗教 オープン・リサーチ・センター
特別講演

「成長から持続可能性へ―効率・競争の時代から共生・共感の時代へ」

河口真理子
(株式会社大和総研 経営戦略研究部部長・経営戦略研究所主任研究員)
<専門領域>
CSR: Corporate Social Responsibility (企業の社会的責任)
SRI: Socially Responsible Investment (社会的責任投資)

2009年11月12日(木) 10:45~12:15
龍谷大学 深草学舎 顕真館


リーフレット

第14期研究展示「自然と人間のつながり―水俣病に学ぶ」詳細



【ごあいさつ】

慈光照護の下、皆様におかれましては、日々ご研鑽のことと拝察いたします。平素は、龍谷大学に対し、さまざまなご教示、ご支援を賜り、深く御礼申し上げます。
お蔭様で、龍谷大学は2009年(平成21年)に創立370周年を迎えました。龍谷大学では、文部科学省の学術研究高度化推進事業に採択された8つの研究センターが、「共生と持続可能性のある世界をめざして」というテーマに共に取り組んでいます。
「持続可能性(サステイナビリティ)」とは、人類が他の生命をも含めた多様性と地球資源の有限性を考慮し、自然や生き物を守るとともに、発展途上国を含めたすべての人々の暮らしや多様な文化を守り育てていくことです。地域や世代を超えて、地球環境と人類が共生していく道を探究していくことです。私たち人類は今、未来の世代を守るために、「持続可能性」の在り方を新たに切り開らかなければならないでしょう。
そういう時代にあって、河口真理子先生は、サステイナビリティや地球低炭素社会の実現のために、世界中の取り組みを踏まえながら、早くから提言をなさっておられます。河口先生に学んだことは、サステイナビリティ(持続可能性)が、生態系・地球環境の持続可能性とともに、人類の文明社会・生活の持続可能性の両面から確立されていかなくてはならないということです。こうして企業の持続可能性が重視され、多くの日本企業が、CSR (Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任)報告書を作成して、地球環境保護につながる新しい企業の姿を求めています。河口先生によると、この企業の持続可能性は、いわゆるガバナンスやコンプライアンスなどのように企業の存続だけを考えるのではなく、企業自体が地球環境と人類社会の持続可能性のために取り組んでいくものなのです。この講演を通して、地球上のあらゆるいのちが共生しうる理想的な社会の姿を、皆様とごいっしょに考えたいと思います。皆様のご来場をお待ちしています。


龍谷大学 人間・科学・宗教 オープン・リサーチ・センター
鍋島直樹



【報告】

河口先生は、環境・労働・人権問題等をいかに企業経営に取り込むべきか、という企業の社会的責任と、そのような問題に対して活動を行っている企業を投資家としてどう評価し、投資していくかという社会的責任投資の2つを主要な研究テーマとされている。また、近年では「つながり」「気づき」をキーワードにしてスピリチュアリティーと経営の問題にも取り組まれている。


そのような河口先生のお話は、エコカー、京都議定書やサブプライムローンなどの具体的な例や、研究結果から導かれた詳細なデータなどから現代が直面する環境、貧困・飢餓、労働、また金融問題を提示された。個々の問題が重要なことは間違いないが、また同時に、「国際的に見ますと、環境問題と貧困問題は、これは二つをセットで解決していくしかないということが言われるようになってきまして」と指摘されるように、あらゆる事柄が連関しつつ、しかも我々に直接関係ある問題として提起されていることを指摘された。これは、河口先生のスタイルでもある「時間軸を可能な限り長く考える」という例で示されたように、人類誕生から考えればたった0.5パーセントの常識しか持たない人類が発展、成長してきた上で、必然的に迫られているパラダイムシフト、社会システムの転換と関わりあるものとして提示された。このような指摘は、博報堂の研究所の研究成果として消費の中では「つながり」がキーワードであり、共生という方向へ社会がシフトしつつある、と言われたように河口先生だけがこのような提言をされているわけではない。こうした中でキーワードとなるのが、今回のテーマでもあった「持続可能性」であり、関係概念として提示されたのがCO2を出さないような社会としての「低酸素力型社会」、多様な生物によって成り立つ我々の社会を意味する「自然共生社会」などであった。


河口先生が指摘されるパラダイムシフトは、現在ある何らかの状況に対して共生や新たな社会システムの導入が必要である、ということ以上に、現在の社会システムそのものが新たな局面へと足を踏み出しているのであり、それが「共生」や「つながり」、または「持続可能な社会」というものである、というものであった。これは、我々の側から言えば、現代の社会が仏教的思想を基盤とした社会へ、または仏教的思想を必要とするような社会へと移行しつつあると友好的に受け取ることもできるが、同時に、その仏教的思想がいかに具体的に社会へと還元されるべきかが問われているのであり、仏教の側の積極的な活動を期待するという側面をも意味するものだと受け取れよう。


(UNIT 1 RA 岡崎秀麿)



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