人間・科学・宗教シンポジウム(第1回)
非暴力と共生(ともいき)の世界を願って

リーフレット:龍谷大学 人間・科学・宗教シンポジウム(第1回)「非暴力と共生(ともいき)の世界を願って」

龍谷大学創立370周年記念事業
人間・科学・宗教総合研究センター
文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業
採択プロジェクト連携合同企画

人間・科学・宗教シンポジウム(第1回)
「非暴力と共生(ともいき)の世界を願って」



【会期】

2009年12月8日(火) 13:00~18:30



【プログラム】

第1部(13:00~15:20)
13:00~13:20 開会式

開会挨拶:
若原道昭(龍谷大学学長)
ご来賓ご挨拶:
大谷光真(浄土真宗本願寺派第24代門主)

13:20~15:20 研究発表

「あらゆるいのちの共生と非暴力」
各センターからの研究成果報告
古典籍デジタルアーカイブ研究センター
情報通信システム研究センター
矯正・保護研究センター
アフラシア平和開発研究センター
人間・科学・宗教 オープン・リサーチ・センター


15:20~15:35 休憩


第2部(15:35~18:30)
15:35~16:45 特別講演1

「慈悲と非暴力―ダライ・ラマとの対話」
上田紀行
(文化人類学者 / 東京工業大学大学院准教授 / 博士(医学))

<レスポンス>
鍋島直樹
(人間・科学・宗教シンポジウム実行委具長 / 人間・科学・宗教 オープン・リサーチ・センター センター長 / 龍谷大学法学部教授)


16:45~17:00 休憩


17:00~18:15 特別講演2

「非暴力の有効性―ガーンデイーの運動が語るもの」
長崎暢子
(東京大学名誉教授 / 龍谷大学名誉教授 / 龍谷大学人間・科学・宗教総合研究センター研究フェロー / 博士(文学))

<レスポンス>
武田龍精
(龍谷大学名誉数授 / 龍谷大学 人間・科学・宗教総合研究センター研究フェロー / 博士(文学))


閉会の辞



【会場】

京都ホテルオークラ4階 暁雲(ぎょううん)の間
(詳しくは、リーフレットをご覧下さい。)


【アクセス】

地下鉄東西線「京都市役所前駅」直結
(JR「京都駅」より地下鉄烏丸線「烏丸御地駅」乗換。地下鉄東西線「京都市役所前駅」下車ホテル地下2階と直結)
JR京都駅よりタクシーで約15分
(詳しくは、リーフレットをご覧下さい。)



【備考】

  • 申込受付は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。



【お問い合わせ】

龍谷大学 研究部 人間・科学・宗教総合研究センター
(TEL)075-645-2154・2184
(FAX)075-645-2240
※平日10:00~17:00



【開催趣旨】

現代社会は、さまざまな場面で攻撃的になっている。正義や原理主義をふりかざす戦争やテロ、想像しえなかったような事件や犯罪が毎日の報道に繰り返されている。職場や学校でも言葉やメールによる中傷が後を絶えず、さらにはDVと呼ばれる暴力も横行している。それら暴力が生まれる背景には、貧困や飢餓、差別や虐待などの排除の現実があるだろう。誰にも認められないという虚しさから暴力が起きているのかもしれない。


釈尊は、


怨みに報いるに怨みをもってしたならば、ついに怨みの息むことがない。怨みをすててこと息む。これは永遠の真理である。

(ダンマパダ第5偈)


と説いた。親鸞もまた、


念仏せんひとびとは、かのさまたげをなさんひとをばあはれみをなし、不便におもうて、念仏をもねんごろに申して、さまたげなさんを、たすけさせたまふべし

(御消息集9)


と記し、弾圧者を敵対視せずに、迫害を行う人たちに慈悲をかけよと説いている。ノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマ14世(14th Dalai Lama)は、


今日私たちが直面する暴力、自然破壊、貧困、飢えなどの諸問題は、人間が作り出した問題です。ですから、努力や相互理解、また人類愛を育むことによって解決が可能です。私たちは、お互いに対しても、また一緒に暮らすこの惑星に対しても、宇宙的な責任感を養う必要があります。仏教では敵すらも愛し、慈悲の心をもてと教えています。信仰の有無に関わらず、誰でも温かい心と宇宙的な責任感を育てることはできます。

(ノーベル平和賞受賞スピーチ 1989年 ノルウェー・オスロ)


と語っている。心に平和を培い、非暴力と寛容さを身に纏うことが、世界に求められているだろう。


この「非暴力と共生の世界を願って」のシンポジウムにおいては、「人と人との共生の在り方」に焦点をしぼる。人は誰しも幸せになることを願って生きている。誰も苦しみを求めてはいない。戦争や虐待の原因は、相手に対する無知と自らの利己心にある。人は誰からも愛情をうけずに冷遇されると自信を失う。そして、人からの攻撃を受けて大切なものを失い、信じられるものがなくなると、自己も相手の存在も希薄になり、自殺を試み、暴力をふるうようになる。人はすさんだ状況によってはどんな恐ろしいことも犯してしまう心の暗闇を有していることに気づいていく必要がある。争いをなくす道は、武力による鎮圧ではなく、貧困や飢餓に対する手厚い保護と愛情であり、子どもたちが男女の区別なく等しく教育を受けられるようにすることであり、寛容さと忍耐を持って相手に接し、対話を継続しながら、相互に理解しあい、共生していくことだろう。


龍谷大学の学術研究高度化推進事業では、あらゆるいのちの共生を考えるために、ベゼクリク石窟寺院壁画や大谷探検隊将来品など世界的な文化遺産をデジタルアーカイブとして保存・復元・公開する研究(古典籍デジタルアーカイブ研究センター)、世界における武力紛争の平和的解決と異文化理解の探究(アフラシア平和開発研究センター)、21世紀の刑事政策につながる犯罪対策、矯正と更生保護システムの創出(矯正・保護研究センター)、生きとし生けるものへの慈愛と責任と感謝を培う仏教生命観の教育研究(人間・科学・宗教 オープン・リサーチ・センター)、地震災害時でも通信できるアドホック無線ネットワーク開発(情報通信システム研究センター)の研究が進められている。このように人と人との非暴力と共生の世界を築くために、仏教の共生観を心の羅針盤とし、諸科学における共生(symbiosis)の知見を結集して、人類の歴史と未来への責任を見据えることが望まれるだろう。


人間・科学・宗教シンポジウム実行委員長
人間・科学・宗教 オープン・リサーチ・センター センター長
法学部教授
鍋島直樹



【事業報告ならびに御礼】

若原道昭(龍谷大学学長)

龍谷大学には、文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業、および私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に採択された研究センターが8センターある。2008年7月に、それら学術研究高度化に取り組んでいるセンターが連携して、人間・科学・宗教シンポジウムを二回にわたって開催することを決定し、研究部の全面的支援を受けて一年余りかけて準備してきた。


2009年12月8日、第一回の「非暴力と共生の世界を願って」のシンポジウムが、第一部と第二部にわけて午後1時から午後6時20分まで、京都ホテルオークラ4階暁雲の間を会場として開催した。参加者は最大250名で、約220名は長時間にも拘らず最後まで参加した。



大谷光真(浄土真宗本願寺派第24代門主)

第一部では、はじめに、龍谷大学若原道昭学長より、本学創立370周年の歴史的意義を顧みるとともに、研究部門では、新しく文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に着手し、8つの研究センターが採択され、本学の共生の理念を具現化し、先進的な研究成果を社会に還元していることを紹介いただいた。


次に、ご来賓として、浄土真宗第二十四代ご門主 大谷光真氏ご臨席賜り、ご挨拶をいただいた。非暴力の姿勢は仏教の根本的立場であり、縁起思想に依拠しながら、我がものという固定的な考え方を反省し、世界全体がつながっているからこそ、一人ひとりが責任を持って生きていく重要性を提言した。

原理原則に立っている時代ではない。理想を掲げて、現実に関わる。仏教徒でなくても、縁起の道理を取り入れて生きていくことができる。これからの時代は、核兵器を作る技術を持ちながらも核兵器を作らず、死刑制度をなくしていくことが求められ、国際和解年を迎えるにあたり、対立する世界が和解(reconciliation)に向かうことを宗教者として深く願われた。



次に、平野武研究部長がコーディネーターとなり、5つのセンターより、研究目的と成果概要の発表があった。


岡田至弘(古典籍デジタルアーカイブ研究センター・センター長 / 龍谷大学理工学部情報メディア科教授)

(1)古典籍デジタルアーカイブ研究センター長の理工学部岡田至弘教授からは、デジタルアーカイブシステムの先進的な技術により、龍谷大学所蔵の写字台、大谷探検隊収集資料の集積保存、解析、修復とともに、そのデジタルアーカイブ技術を教育研究に展開できるように取り組んできたという説明がなされた。研究組織は三班に分かれ、ベゼクリク石窟寺院壁画や大谷探検隊将来品などの文化遺産を国際連携によって研究し、色合いや紙の味わいなども感じ取れるように苦心し、遺産の文化的真価を明らかにしている。


宮下豊勝(情報通信システム研究センター・センター長 / 龍谷大学理工学部電子情報学科教授)

(2)情報通信システム研究センター長の理工学部宮下豊勝教授からは、通信に対する社会の要求に応え、大量の情報を高速で途絶えることなく送るための、新しい情報通信システムの開発について説明があった。その新技術アドホック無線ネットワークは、大災害時でも、基地局なしで、自律的な端末で情報通信が行える画期的なシステムであり、あわせて合奏システムとして利用可能である。これらの研究開発と成果を、学生の教育研究に有機的に組み入れている。


村井敏邦(矯正・保護研究センター・センター長 / 龍谷大学法科大学院教授)

(3)矯正・保護研究センター長の法科大学院村井敏邦教授と副センター長の石塚伸一教授からは、共生の時代における矯正と更生保護について発表があった。当該センターでは、浄土真宗本願寺派の矯正・保護への取り組みを理解、支援し、犯罪や飛行をおかしてしまった人たちの矯正と更正保護に関する教育研究を積極的に展開してきた。犯罪者が社会復帰を果たし、再び犯罪をおかさないように改善更正を図って行くことは、本人の福利のみならず、社会の平穏な秩序維持と安全を確保することにつながる大きな意義を持っている。近年では、「理論」とともに、犯罪者の処遇にあたっている「実務」との架け橋となるような研究が進められている。


ポーリン・ケント(Pauline Kent / アフラシア平和開発研究センター・センター長 / 龍谷大学国際文化学部国際文化学科教授)

(4)アフラシア平和開発研究センター長、国際文化学部ポーリン・ケント教授からは、紛争解決と秩序・制度の構築に関する総合研究―アジア・アフリカの地平からについて発表があった。紛争にはネガティブな面とポジティブな面とがあり、紛争から平和への段階的なプロセス全体に注目している。特に、アジア・アフリカ地域における軍事的、環境的、経済的、社会的、構造的、文化的に複雑に絡み合う紛争のさまざまな段階に理解を示し、四つの視点から実証研究を進めている。特に紛争解決の知として、インド・ガーンディの非暴力の実践、途上国の生存基盤確保につながる資源と環境研究に注目している。平和構築のためには、国家や共同体における和解・共生、コミュニケーション・言語教育政策と和解・共生、人の移動が生み出す社会・文化変容と和解・共生などの課題を見据えてことが重要であると伝えた。


鍋島直樹(人間・科学・宗教シンポジウム実行委具長 / 人間・科学・宗教 オープン・リサーチ・センター・センター長 / 龍谷大学法学部教授)

(5)人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター長、法学部鍋島直樹教授からは、仏教生命観に基づく人間科学の総合研究についての発表があった。このプロジェクトは、縁起説を基に、生命の稀有性と相互依存関係性にめざめ、生きとし生けるものへの慈愛と感謝と責任を培う教育研究をめざしている。四つの研究班に分かれ、パドマ館における研究展示、建学の精神に基づく仏教の思想や大学院教育に成果を還元している。宗教には、排他、包括、多元、共生の四つの態度が見られる。共生とは、自らの宗教に依り処をおきつつ、諸宗教に文化・歴史的基盤があることを尊重し、傷つけあうことをさける姿勢を保つことであり、自然と人間とのつながり、人と人との共生を理想として願うとともに、共生し得ない人間の煩悩性を深く慚愧することによって、互いに和解しあえることを示している。仏教の慈悲と非暴力の思想は、最も罪深く苦しみに沈むものを見捨てない仏の大悲に支えられ、怨みに怨みを返さずに、敵すらも愛する姿勢を生み出してきた。最後にヒロシマ原爆被爆者の証言を紹介し、戦争を後の時代に正当化するのではなく、過去の現実をありのままに知り、悲しみから慈しみを感得していかなくてはならないのではないかと伝えた。一人ひとりが心に平和を培うことが、世界の平和につながる。


平野研究部長は、これらの研究センターの実績と取り組みが、あらゆるいのちの共生と安穏をもたらすものであり、これからも見守っていきたいというエールを送った。



第二部では、上田紀行氏と長崎暢子氏のお二人に、特別講演をいただき、聴衆に深い感動と気づきを与えた。


上田紀行(文化人類学者 / 東京工業大学大学院准教授)

まず、文化人類学者、東京工業大学准教授、上田紀行氏は、物質的価値やお金を追い求めてきた現代日本の私たちが使い捨ての物のように自分を捉え、不安や息苦しさを感じていることを見据え、「生きる意味」を再構築し、仏教ルネッサンスの道を切り開きたいことを述べた。特に、インド・ダラムサラにおいて、ダライ・ラマ14世と上田紀行氏とが二日間にわたって21世紀社会の展望と宗教の役割について対話を行った内容には、仏教の可能性が示されている。その対談は『目覚めよ仏教! ダライ・ラマとの対話』(NHKブックス)にまとめられている。この講演では、ダライ・ラマとの対談の模様をDVDを上映しながら紹介いただき、ダライ・ラマの表情や思想が聴衆に臨場感をもって伝わった。宗教や法律をもちだす以前に、人間は社会的動物であり、愛と思いやりこそが生きる原動力になっている。ダライ・ラマ自身が自らを搾取階級に属していると自覚し、権威や権力をもちつづけている者は、格差や貧困を思いやる責任があることを述べたことに上田氏は驚いたという。格差のある現実をみずに、人間が煩悩にまみれた存在であることを強調して、ただ同じ人間であるとフラットにするだけでは、世界のよき変革はない。この世界には、格差があり搾取するものと搾取されているものの構造があることをまず自覚していかなければならない。また、慈悲の実践とは、敵を憎まず、悪意のある怒りをなくし、忍耐を保つことである。しかし、慈悲から生じる怒りもあることをダライ・ラマが強調したと上田氏は語った。親が子どもを叱るように、人間の社会的不正に対して、怒り闘うことも重要である。社会的不正と闘う怒りと、暴力の連鎖をたちきる寛容さとの両面が、慈悲の実践には必要である。「武力で祖国を勝ち取っても、そこに愛するチベットはない」、それがダライ・ラマの精神であるという。最後に、上田氏は、仏教徒は縁起思想を尊重してきたが、過去から受けた「後ろの縁起」ばかりの話になってはならない。むしろ、子どもたちへよき種を蒔く「未来への縁起」を生み出すように努力していかなくてはならないという熱いメッセージを届けた。
レスポンスの鍋島は、私たちが煩悩性をもつ同じ人間であるとだけ語って、構造的な格差の現実に眼を閉ざしてはいけないこと、慈悲心をもって寛容な姿勢を保ちつつ、時には、社会的不正に対し、慈悲心をもって怒るような姿勢をもつべきことを上田氏の講演から学んだことに深く感謝した。また、未来の世代へよき種をまくために、どのような教育研究の姿勢を持つべきであるかをたずねた。上田氏は、すでにある慈悲に気づいていくことが重要であり、些細なところに執着して愚痴や不平を述べるよりも、学生一人ひとりの大志を育てることが大切であると応えた。他者の攻撃におわらずに、もっと大きな世界に向けて怒り、愛すべき安穏な世界を築いていくように努めなければならない。世界を愛する大切さに気づいた子どもたちをほめることが、教育に望まれることである。


長崎暢子(東京大学名誉教授 / 龍谷大学名誉教授 / 龍谷大学人間・科学・宗教総合研究センター研究フェロー)

次に、長崎暢子氏は、東京大学教授として、インド近代史、現代インド学や南アジア地域研究、マハトマ・ガーンディの研究を進め、世界の歴史と現実を踏まえて、非暴力による平和構築の道を示し、また、本学国際文化学部教授として、アフラシア平和開発研究センターの研究者としてご尽力いただいている。長崎氏は、20世紀という時代が、第二次世界大戦、核兵器開発と大量虐殺に象徴されるように、人類が「正義」のために使用する大規模な「暴力」が際限もなく拡大していった時代であったと反省した。その上で、どうすれば強大な暴力を使わせないか、社会的不正義と闘って非暴力の実践によって平和を構築するにはどうすればよいかについて明らかにするために、マハトマ・ガーンディの非暴力運動に注目した。マハトマ・ガーンディは、真実(サーティヤ)を追求(アーグラハ)し、真実を堅固に守り、不殺生(アヒンサー)の生き方を貫いた。ガーンディはその真実とは何かについて、(1)人間が理解できるのは相対的真実にすぎない、(2)人間は絶対的真理を知ることはできない、(3)真理には多面性があり、相手の中にも一片の真理があるかもしれない、と説明している。また、献身奉仕(タパスヤ)とは、相手から取ろうとするのではなく、自分の犠牲を払い、罰を自ら引き受ける態度である。そこに非暴力であるが真実を貫くというガーンディの態度がある。非暴力の現実的な実践にあたっては、コミュニケーションの重視、対話の重視、指導者と被指導者という関係を認めず、同じ会員として奉仕すること、双方が敗北しないようにし、妥協の美しさを尊重することなどがあるとされた。最後に、長崎氏は、ガーンディが妻から非暴力の姿勢を学んだと語っていることを紹介し、弱い人たちこそが非暴力を実践していることに気づかせてくれた。


武田龍精(龍谷大学名誉数授 / 龍谷大学 人間・科学・宗教総合研究センター研究フェロー)

レスポンスの本学名誉教授の武田龍精氏は、真宗学者としてハーバード大学との研究交流を初め、他宗教との対話を国際的に進め、人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター初代センター長として研究を牽引してきた。武田氏は、広島で被爆した経験をふりかえり、オバマ大統領が2009年4月5日、チェコの首都プラハにおいて、「核兵器を使用した唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任がある」と語ったことに触れ、米国が原爆投下を正当化せずに、核兵器廃絶を願っていることに期待した。長崎暢子氏のガーンディ研究の研究書を紹介しながら、その非暴力の実証研究が、実際に平和構築に活用できるものであることを高く評価した。ガーンディは、非暴力を最高の神とし、非暴力の宗教には国境がないことを明かしている。また、ガーンディが多文化共生を目指し、「たとえ剣の教義でインドの独立を勝ち取ったとしても、それでは愛するインドではなくなる」と示した点なども紹介し、深い感銘を与えた。
最後に、河嶋壽一副学長より、閉会の辞をいただいた。河嶋副学長は、発表者や講演者、また来場者や関係各位すべての方々に対する深い感謝を述べるとともに、本学らしい特色ある、そして強みのある教育研究をこれからも推進していきたいと語った。何よりもシンポジウムに参加して、縁起の世界を知り、私たち一人ひとりがこの世界のためにできることを果たしていくことが、ついには真の非暴力と共生の世界を築いていくことになるだろうと呼びかけた。会場は満たされた気持ちに包まれた。多くの感動と感謝を伝えるアンケートが届いている。


最後に、ご臨席いただいた浄土真宗本願寺派ご門主、本願寺派総長、本学学長、副学長、事務局長の方々に心強いご支援をいただいたこと、各センター長の成果発表、特別講演者の上田紀行教授と長崎暢子教授、レスポンスの武田龍精教授に真剣にお話いただいたこと、研究部をはじめとする関係者すべてにご準備いただいたこと、お越しいただいた来場者に、深い感謝の気持ちで一杯である。
この上は、このシンポジウムを縁として、本学の特色を生かした教育研究にひきつづき取り組み、非暴力と慈悲の大切さを未来の世代に伝えていきたい。


心から感謝を込めて

人間・科学・宗教シンポジウム実行委員長
人間・科学・宗教 オープン・リサーチ・センター センター長
法学部教授
鍋島直樹