人間・科学・宗教シンポジウム(第2回)
共生(ともいき)と持続可能性のある世界をめざして

リーフレット:龍谷大学 人間・科学・宗教シンポジウム(第2回)「共生(ともいき)と持続可能性のある世界をめざして」

龍谷大学創立370周年記念事業
人間・科学・宗教総合研究センター
文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業
採択プロジェクト連携合同企画

人間・科学・宗教シンポジウム(第2回)
「共生(ともいき)と持続可能性のある世界をめざして」



【会期】

2010年2月13日(土) 13:00~17:40



【プログラム】

第1部(13:00~15:15)
13:00~13:15 開会式

<開会挨拶>
若原道昭(龍谷大学学長)

13:15~15:15 研究発表

「地球と人間の持続可能性の探求」
各センターからの研究成果報告
人間・科学・宗教 オープン・リサーチ・センター
里山学研究センター
革新的材料・プロセス研究センター
地域人材・公共政策開発システム・ オープン・リサーチ・センター
<レスポンス>
河口真理子
(株式会社大和総研経営戦略研究部部長・経営戦略研究所主任研究員、
社団法人日本証券アナリスト協会検定委員、青山学院大学講師)
【専門領域】
CSR:Corporate Social Responsibility / 企業の社会的責任
SRI:Socially responsible investment / 社会的責任投資


15:15~15:30 休憩


第2部(15:30~17:40)
15:40~17:30 特別講演

「Creative Sustainability Beyond COP15: Cities Change Politics
地域から切りひらく持続可能な未来~COP15で何が話し合われた のか」
<講師>
Gino Van Begin / ジノ・ヴァン・ベギン
(Regional Director, ICLEI Europe)
(「イクレイ―持続可能性をめざす自治体協議会」世界事務局次長・
ヨーロッパ事務局長)
イクレイ(International Council for Local Environmental Initiatives / 国際環境自治体協議会)は、1990年に発足した持続可能な発展をめざす地方政府の連合体で、現在では1000を越す地方政府がメンバーとして参加しています。地域レベルでの持続可能な発展を推進するにあたり、各種情報や研修・トレーニングの提供、国際会議の開催、国際的ネットワークの構築と知識の共有、研究・パイロット事業の遂行、技術的サポートやコンサルティングなどの業務を行っています。
Gino Van Begin氏は、過去30年にわたりEU関連の国際機関などにおいて、持続可能な発展のフィールドで活躍。イクレイには2000年からローカル・アジェンダ21プログラムのディレクターとして参加し、2002年からヨーロッパ事務局長、2007年から世界事務局次長を兼務しています。2000年からは、「ヨーロッパ持続可能な都市キャンペーン」にも理事として参加し、ヨーロッパの500を超える都市が署名した、持続可能な都市のための「オルボー憲章」を共同起草しました。また、昨年12月にコペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)においても、イクレイ代表の公式オブザーバーとして様々な委員会に参加したほか、本大会と並行して設置された「地方政府気候ラウンジ」においても、世界の地方政府の声を取りまとめる上で、重要な役割を担いました。
<レスポンス>
高村ゆかり
(龍谷大学法学部法律学科教授)
白石克孝
(龍谷大学法学部政治学科教授 / 地域人材・公共政策開発システムオープン・リサーチ・センター・センター長)
牛尾洋也
(龍谷大学法学部法律学科教授 / 里山学研究センター・副センター長)


閉会の辞



【会場】

龍谷大学 深草学舎 顕真館
リーフレットもご覧ください。)



【備考】

  • 入場無料
  • 定員400名
  • 事前申し込みが必要です。申し込み方法については、リーフレットをご覧ください。



【開催趣旨】

サステイナビリティ(持続可能性)は、1987年にまとめられた国連「環境と開発に関する世界委員会」(委員長:ブルントラント・ノルウェー首相)の報告書『私たち共通の未来(Our Common Future)』の「持続可能な発展・開発(sustainable development)」というコンセプトに起因している。「持続可能な発展」とは、「将来世代のニーズを損なうことなく、現在の世代の現存する人々のニーズも満たすような発展」を意味する。持続可能性とは、世代間平等性(intergenerational equality)を保つ発展概念といえる。
ふりかえってみると、近代の資本主義の波が世界に広がり、グローバルな世界観になるに伴い、人類は地球の資源を活用し、機械化産業によって大量生産を行い、市場を拡大して、経済成長することをめざしてきた。しかしその反面、1972年に出されたローマクラブの報告『成長の限界(Limits to Growth)』が示したように、地球資源は有限であり、「市場・産業・貯蓄」による成長には限界があることにも人類は気づきはじめた。また、IPCC(気候変動に関する政府間パネル: Intergovernmental Panel on Climate Change)は2007年に、21世紀末の地球の平均気温が20世紀末と比較して4℃上昇、最大6.4℃上がると予測した。
その一方で、人類の現実に目を向けると、国連開発計画(UNDP: United Nations Development Programme)によれば、2007年において12億人(18%)が一日1ドル未満で、20億以上の人々(30%)が2ドル未満で生活している。いまだに10億人以上が安全な水を、8億5千万人以上が充分な食料を得ることができない。適切な医薬品がなく治療が受けられないために、5歳までに死亡してしまう子どもたちが毎年1千万人もいるなど、依然多くの人々が豊かさから取り残されている。
したがってサステイナビリティとは、人類が他の生命をも含めた多様性と地球資源の有限性を考慮し、生きとし生けるもののいのちと自然を守るとともに、発展途上国を含めたすべての人々の暮らしや多様な文化を守り育てていくことであり、地域や世代を超えて、地球環境と人類が共生していく道を探究していくことであろう。
このシンポジウム「共生(ともいき)と持続可能性のある世界をめざして」では、「自然と人間との共生」に焦点をしぼり、これらの成果と活動を尊重して、少しでも身近なところから、私たち自身が、持続可能性を考慮して、地球環境の保護に取り組み、人類社会の貧困や飢餓を減少させるように願っている。
釈尊は、「一切の生きとし生けるものは、幸福であれ、安穏であれ、安楽であれ」(スッタニパータ146偈)と説き、親鸞も「慈眼をもって衆生を視そなわすこと平等にして一子の如し」(『教行証文類』行巻)と示している。めざすべきは、人類は生き物の頂点に立っているという優越感を捨て、命を奪ってしか生きられないからこそ、他の命に対して感謝し、謙虚な姿勢を保つ必要がある。「少欲知足」「お蔭さま」「もったいない」「いただきます」「ごちそうさま」の伝統を受け継いでいくことも、地球を救う重要な鍵になるだろう。
龍谷大学の学術研究高度化推進事業では、未来への持続可能性を見据え、地域社会システムの再生と効果的な公共政策の実現(地域人材・公共政策開発システム・オープンリサーチセンター)、生態系保全と環境教育のために里山保全を通じて人間と自然の共生の道を探る総合的研究(里山学研究センター)、省資源・エネルギー変換・貯蔵に関する研究開発(革新的材料・プロセス研究センター)、仏教生命観に基づき、かけがえのない生命を守る共生教育の拡充と砂漠緑化の植林を進める「アミダの森―いのちを大地に返す運動」の支援や自然と人間のつながりの回復(人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター)、に取り組んでいる。それらの智慧と実践を組み合わせて、地球環境と人類社会の持続可能性の道を切り開いていきたい。


人間・科学・宗教シンポジウム実行委員代表
鍋島直樹
白石克孝



【事業報告】

会場の様子(龍谷大学 深草学舎 顕真館)

龍谷大学には、文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業、および私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に採択された研究センターが現在8センターある。2008年に、それら学術研究高度化に取り組んでいるセンターが連携して、人間・科学・宗教シンポジウムを二回にわたって開催することを決定し、研究部の全面的支援を受けて準備してきた。学長室(広報)、ならびに、創立370周年記念事業事務室にも応援いただいた。


第一回人間・科学・宗教シンポジウムは、2009年12月8日に、京都ホテルオークラにおいて、「非暴力と共生の世界を願って」というテーマで開催された。


そしてこのたび、第二回人間・科学・宗教シンポジウムが、2010年2月13日、「共生と持続可能性のある世界をめざして」というテーマの下、第一部と第二部にわけて午後1時から午後5時40分まで、龍谷大学深草学舎顕真館において開催された。本学学長、お二人の副学長をはじめ、参加者約120名は、長時間にも拘らず最後まで熱心に耳を傾けた。


第一部では、はじめに、龍谷大学若原道昭学長よりご挨拶をいただいた。若原学長は、龍谷大学創設の由縁と、本学創立370周年の歴史的意義を顧み、新しい未来を切り開くために、研究部門において、文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に着手し、8つの研究センターが採択され、本学の進取と共生の理念を具現化し、先進的な研究成果を社会に還元していることを紹介した。


次に、平野武研究部長のコーディネートにより、4つのセンターより、研究目的と成果概要の発表があった。


    鍋島直樹(人間・科学・宗教シンポジウム実行委具長 / 人間・科学・宗教 オープン・リサーチ・センター・センター長 / 龍谷大学法学部教授)
  • 人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター長、法学部教授の鍋島からは、「仏教生命観に基づく人間科学の総合研究」についての成果報告があった。このプロジェクトは、縁起説を基に、生命の稀有性と相互依存関係性にめざめ、生きとし生けるものへの慈愛と感謝と責任を培う教育研究をめざしている。四つの研究班に分かれ、研究展示館パドマにおける展示には14期で2万人以上の参観者があり、また、建学の精神に基づく仏教の思想や大学院教育に成果を還元している。仏教や親鸞の生命観、アインシュタイン、南方熊楠、宮澤賢治等の思想を紹介した。微塵の世界まで満ちている仏の慈悲に気づき、人が自然や多くの人々の恵みの中で、生かされている事実に気づく時、感謝とともに人間の傲慢さを慚愧し、相手の幸せの中に自己の幸せを感得するような生き方がうまれてくるだろうと提言した。
  • 宮浦富保(里山学研究センター・センター長 / 龍谷大学理工学部環境ソリューション工学科教授)
  • 里山学研究センター長、理工学部教授の宮浦富保氏からは、「地球と人間の持続可能性―里山から学ぶこと」をテーマに、成果報告がなされた。里山は、人間と自然とが共生する場であり、里山を入会地として地域社会の中で共同利用することによって、エネルギーを循環的に活用でき、地域文化を産みだし、里山の景観も守ることができる。滋賀県の瀬田丘陵の1947年頃と現在を鳥瞰した航空写真が紹介され、瀬田にある龍谷の森がいかに貴重な森であるかがよくわかった。特に、この里山学研究センターは、里山の現代的応用に取り組んでいるところに意義がある。一つは、里山の地域資源利用である。バイオマス資源の生産と利用によって、水資源の安全性を確保し、里山景観の中での物質循環がなされている。二つには、里山の生物多様性保全である。三つには、里山の暮らしと環境教育である。里山環境を利用した教育プログラムによって、人々の暮らしと里山との関わりを体感することができる。四つには、歴史的・哲学的・制度的研究である。里山の所有・利用・管理をめぐって、法学・環境哲学・環境倫理学などの研究が進められている。イギリスのポールスミザーは、龍谷の里山の森を訪ねて、そこに懐かしい風景を感じたという。それほどに里山は、自然と人間の共生の中で受け継がれ、人々の懐かしき故郷を形作っていることがうかがわれる。
  • 大柳満之(革新的材料・プロセス研究センター・センター長 / 龍谷大学理工学部物質化学科教授)
  • 革新的材料・プロセス研究センター長、理工学部教授、大柳満之氏からは、「エネルギー有効利用のための革新的材料研究開発」というテーマで、成果報告がなされた。1989年に理工学部が開設されて以降、文部科学省高度化推進事業として、1996年に第一期HRC(ハイテクリサーチセンター)が始まり、2006年より革新的材料・プロセス研究センターが生まれた。センターの目的は、省エネルギープロセス、エネルギー変換・貯蔵に関する研究開発を軸におき、学理に基づく新産業創世に貢献できる知的財産の創出や人材育成を目指している。第一研究班、省エネルギープロセスグループでは、メカニカルアロイ、液相析出法、低温化焼結、燃焼合成、脱石油化学プロセスの研究などが進められている。第二研究班、エネルギー変換・貯蔵グループでは、太陽電池材料、燃料電池材料、光化学エネルギー変換材料などの研究を展開している。中でも天然木自在シートは、ソフトバンクやエプソン製パソコンのカバーに応用されている。また、超高密度炭化ケイ素焼結体の開発や水素吸蔵合金などの技術開発は工業会から極めて髙い評価を得ている。さらに、大学院GPに採択された「東洋の倫理観に根ざした国際的技術者養成」では、研究の裏側にあるものの見方を学生に教育し、仏教の共生観に学びながら、科学技術のあり方を考え、その成果は日米で出版されている。
  • 白石克孝(地域人材・公共政策開発システム・ オープン・リサーチ・センター・センター長 / 龍谷大学法学部政治学科教授)
  • 地域人材・公共政策開発システムオープン・リサーチ・センター長、法学部教授、白石克孝氏からは、地球と人間の持続可能性の探究について、研究成果を踏まえながら、二つの角度から提言があった。一つめの提言は、地域のガバナンスの改革である。すなわち、政府・市場・市民社会という3セクターを横断的・統合的に考察する視点が重要であるということである。今まで、それら三つのセクターがばらばらに実施してきたものを調整、統合する役割が地域に求められ、地域のガバナンスの改革が、持続可能性の構築につながる。ガバナンス、統治とは、課題に取り組み、限られた資源を守りながら、多様な担い手を生かすことである。改革には、二つの物差し、すなわち、「地域の社会的能力(Social Capacity)を高めること」と、「地方政府の制度的能力(Institutional Capacity)を高めること」が必要であると、白石氏は述べた。二つ目の提言は、持続的社会の構築である。環境と経済と社会の持続可能性の実現には、1)ビジョンと制度的仕組みの両方が必要であり、2)広い視野に立ち、セクター横断的に「公益」を再定義することが必要であり、3)セクター横断的な協働を担うことができる人材、地域公共人材の育成が必要であるとされた。マルチパートナーシップの構築、地域公共人材の活躍によって、ばらばらの政策ではなく、根底から地域を総合的に支えるシステムを探求していることがうかがわれる。

河口真理子(株式会社大和総研経営戦略研究部部長)

レスポンスの河口真理子氏は、株式会社大和総研の経営戦略研究部長であり、サステイナビリティや地球低炭素社会の実現のために、世界中の取り組みを踏まえながら、早くから提言をしてきた方である。準備段階で河口氏に学んだことは、サステイナビリティ(持続可能性)が、生態系・地球環境の持続可能性とともに、人類の文明社会・生活の持続可能性の両面から確立されていかなくてはならないということである。こうして企業の持続可能性が重視され、多くの日本企業が、CSR (Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任)報告書を作成して、地球環境保護につながる新しい企業の姿を求めている。河口氏によると、この企業の持続可能性は、いわゆるガバナンスやコンプライアンスなどのように企業の存続だけを考えるのではなく、企業自体が地球環境と人類社会の持続可能性のために取り組んでいくものである。


レスポンスの河口真理子氏は、4センターの研究成果を聞いて、これからの時代に求められているものを強く感じ、二つの面から応答した。一つは、地動説を唱えたガリレオがローマカトリック教会から追放された事件に象徴されるように、16世紀頃を境に、宗教から自然科学、社会科学が分断、独立してきた。しかし、21世紀の今、分断されていた学問が再び統合されていく時代になってきていると河口氏は話した。親鸞が「如来、微塵世界に満ち満ちてまします」という視座は、物理学的に、ナノなどの極小単位にまで意味を見出して技術開発する科学者の姿勢と共通するところがある。科学的に最先端である里山学の研究を通じて、里山を見て懐かしいと語る学者の声を生み出している。天然木と西陣織を見事に組み合わせながらモダンでスタイリッシュな物づくりをする背後には、自然や伝統的産業を重んじる価値観がある。これらは異分野の最先端の科学的研究が仏教のものの見方と重なりつながっていることを示している。成長は善であるとしてきたパラダイムを転換し、心の豊かさを重んじる時代へとなることによって、企業の持続可能性や地球の持続可能性がうまれてくる。もう一つは、地域人材・公共政策開発システムオープン・リサーチ・センターからの研究成果にみられるように、これからの時代には、ローカルコミュニティ、地域社会や、ローカルガバナンス、地方統治の果たす役割が大きくなってくるだろうと河口氏は話した。里山を現代的に利用し、赤松などのバイオマスの研究開発は、江戸時代に水車などを用いて地域での循環型社会を形作っていたよき姿を、現代に蘇らせるものだろう。河口氏は、情報はグローバルに共有しつつ、物づくりはローカルに、という時代に変革していくだろうと述べた。各センター長もそのレスポンスを受けて、これからの時代は、欲至上主義の方向を転じて、相手の幸せを自己の幸せと感得するような利他の心が大切であり、人々にやりがいや生きがいを生み、ばらばらの世界に絆を生み出すことにつながるような研究をつづけたいと訴えた。最後に、河口氏は、パラダイムシフトの指標として、グローバルからユニバーサルへという見方を説明した。一つの価値観を世界に普及させるグローバルに対して、ユニバーサルとは、愛する風土、文化、ローカルなものを大切にし、すべては地方から始まるという見方である。実にハッとする示唆の富んだ視点である。河口真理子氏は、シンポジウムの後で、大柳満之センター長の研究プロジェクトが、CからHへ、炭素から水素へパラダイムシフトして持続可能性につながる優れた研究であるとも語ってくれた。


平野研究部長からは、これらの研究センターの実績と取り組みが、地球と人間の共生と持続可能性につながる研究であり、こうして異なるセンターが成果を共有しあえた意義を喜び、これからも各センターの教育研究を見守っていきたいというエールを送った。



Gino Van Begin / ジノ・ヴァン・ベギン(「イクレイ―持続可能性をめざす自治体協議会」世界事務局次長 / ヨーロッパ事務局長)

第二部では、ジノ・ヴァン・ベギン(Gino Van Begin)氏による特別講演が、同時通訳で行われた。ジノ・ヴァン・ベギン氏は、イクレイ世界事務局次長・ヨーロッパ事務局長を務めている。イクレイは、1990年に発足した持続可能な発展をめざす地方政府の連合体で、現在では1000を超す地方政府がメンバーとして参加している。地域レベルでの持続可能な発展を推進するにあたり、各種情報や研修・トレーニングの提供、国際会議の開催、国際的ネットワークの構築と知識の共有、研究・パイロット事業の遂行、技術的サポートやコンサルティングなどの業務を行っている。


ジノ・ヴァン・ベギン氏は、過去30年にわたりEU関連の国際機関などにおいて、持続可能な発展のフィールドで活躍。イクレイには2000年からローカル・アジェンダ21プログラムのディレクターとして参加し、2002年からヨーロッパ事務局長、2007年から世界事務局次長を兼務している。2000年からは、「ヨーロッパ持続可能な都市キャンペーン」にも理事として参加し、ヨーロッパの500を超える都市が署名した、持続可能な都市のための「オルボー憲章」を共同起草した。また、昨年12月にコペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)においても、イクレイ代表の公式オブザーバーとして様々な委員会に参加したほか、本大会と並行して設置された「地方政府気候ラウンジ」においても、世界の地方政府の声を取りまとめる上で、重要な役割を担っている。


ジノ・ヴァン・ベギン氏は、「Creative Sustainability Beyond COP 15: Cities Change Politics地域から切り開く持続可能な社会―COP15で何が話し合われたのか」と題して、特別講演を行った。講演内容は、(1)「イクレイ 持続可能性をめざす自治体協議会」の紹介、(2)COP15における国際交渉と地方政府:気候変動に関する国際交渉―イクレイの評価、地方政府の声と成果、(3)気候変動対策および持続可能性の実現におけるCOP15以降の地方政府の役割と責任、(4)地方政府をサポートする国際的枠組み・政策にわたった。特に、コペンハーゲンの遮音塀、廃熱による暖房、バルセロナの公共の自転車共有システム、太陽熱利用の温水条例、マスダール(アラブ首長国連邦)のゼロ・カーボン・シティ、自然冷却技術、サンフランシスコの無公害車(ZEV)を利用した低排出交通システム、太陽エネルギーシステム、トロントの湖水利用による冷却、大気基金、ハバナ(キューバ)の都市農業、ダルエスサラーム(タンザニア)の都市農業と戦略的都市開発・政策などの紹介は、都市が地球温暖化対策において重要な役割を有していることを如実に知ることができた。まとめとして、ジノ・ヴァン・ベギン氏は、(1)二人に一人が都市に住んでいる。(2)都市においてCO2を減らすことが、世界規模でCO2を減らすこと。(3)各都市で持続可能な発展に取り組むことが世界規模で持続可能な発展に取り組むこと。(4)世界中の地域での取り組みが世界を動かす。という四点をとりあげ、地球温暖化を減らすために、政府は自治体とともに取り組もうと呼びかけた。実にこれからの時代における人間、地域、都市のあり方を指し示す素晴らしい講演であった。


第二部のシンポジウム・レスポンスの様子

引き続き、白石克孝氏の進行により、白石氏、牛尾洋也氏(法学部教授、里山学研究センター副センター長)、高村ゆかり(龍谷大学法学部教授、国際法、国際環境法)の三名から、ジノ・ヴァン・ベギン氏の講演を受けて、シンポジウムが開かれた。最初に、地域という言葉の意味を明確に定義した。地域とは、アメリカに例えてみると、国家政府(National Government)や州(State Government)、地方自治体(Local Government)という政府機関に属するものではなく、伝統ある文明社会を形成している都市などを意味することを明らかにした。白石氏は、地方政府は国家とどのように関係すればよいか、地方政府の役割はどうあるべきか、牛尾氏は、地方自治体と個人の権限とが対立する場合にどのように権限を調整できるか、また、伝統ある町の景観保護は持続可能性とどのように結びつければよいか、高村氏からは、自らが日本政府の環境省委員として、COP15に参加した経験を踏まえた提言や、世界の中でも地球温暖化に弱い、アジアはどのような役割を果たすべきかなどについて発言した。いずれも国家から都市に大きな役割が移行する際に、何が重要であるかを考えさせるものである。地球と人類の持続可能性のために、都市が大きな役割を担っているという考え方は、ヨーロッパの都市国家の歴史と思想に基づいていることだろう。


最後に、河嶋壽一副学長より、閉会の辞をいただいた。河嶋副学長は、発表者や講演者、また来場者や関係各位すべての方々に対する深い感謝を述べるとともに、本学らしい特色ある、そして強みのある教育研究をこれからも推進していきたいと語った。日本社会は、無縁社会の様相を呈し、孤独の中にある人々が増えている。しかし、龍谷大学では、無縁社会ではなく、共生社会をこそ、地域や市民、研究者や学生と共に少しずつ築いていきたいと訴えた。心にぬくもりを感じるメッセージである。多くの気づきと感謝を伝える声が大学に届いている。


21世紀の現在、いわゆる経済成長の神話から、持続可能性のある低炭素化社会へと移行するパラダイムシフトが求められている。今回のシンポジウムのキーワードには、「グローバルからユニバーサルへ」「国家主導から地域ガバナンスへ」「欲至上主義から利他心へ」などが心に浮かび上がる。グローバルとは、マグドナルドのハンバーガーのように誰でもどこでも愛される同じ価値観をもって、世界市場に広がっていく在り方である。その際、地域性は軽視され、伝統価値は軽視されやすい。ユニバーサルとは、京都の京料理や島根県のしじみ汁のように、地産地消でその地域にしかないおいしい食べ物を地元住民が誇りにして尊重し、世界の人々にも味わってもらうというような在り方である。世界政府によって地球温暖化防止を個人にしめつけるのではなく、地域の人たちが自分の故郷を愛するような気持ちで、地球温暖化をなくしていくということではないだろうか。一人ひとりの力、地域の力、都市の力、田舎の力、それが世界を変えるということだろう。


最後に、このシンポジウムで、貴重な提言をいただいた河口真理子氏、ジノ・ヴァン・ベギン氏に重ねて御礼申し上げたい。また、本学の宮浦教授、大柳教授、白石教授ら各センター長の成果発表、高村ゆかり教授、牛尾洋也教授の発表にも、心から感謝申し上げたい。さらに、本学学長、副学長、事務局長の方々に今まで心強いご支援をいただいたこと、本学研究部(人間総研)をはじめとする関係者の方々にご準備いただいたこと、お越しいただいた来場者に、深い感謝の気持ちで一杯である。 この上は、このシンポジウムを縁として、皆様と共に、本学の特色と強みを生かした研究にひきつづき取り組み、身も心も豊かになる教育研究を未来の世代に伝えていきたいと思う。


人間・科学・宗教シンポジウム実行委員長
人間・科学・宗教 オープン・リサーチ・センター センター長
法学部教授
鍋島直樹